正統キリスト教の「神」といえば、肉体を持たない霊的な存在として語られるのが一般的です。しかしモルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)の神様は断然違います。なんと、私たちと同じように「肉体」を持っており、天界で熱心に子作りに励んでいるというのです。
モルモン教初期の教義では、人間は生まれる前に「前世(霊の世)」にいたとされます。そこでは、肉体を持った父なる神(天の父)が、多数の天の母(妻たち)と夜な夜な性交を行い、何百億もの霊の子供たちを次々と出産させていたと教えられています。十二使徒のオルソン・プラットは、公式雑誌『ザ・シーアー(The Seer)』158頁にて、「神となる者のみが不死の子孫を増やすことが許される。ゆえに、それぞれの神は必ず一人、またはそれ以上の妻を持たねばならない」とはっきり書いています。神聖なはずの天界が、実は壮大な「多妻制による繁殖工場」だったというわけです。
さらに驚くべきは、地球にイエス・キリストが誕生するプロセスです。聖書では聖霊によって身ごもったとされるマリアですが、第2代預言者ブリガム・ヤングは、公式説教集『ジャーナル・オブ・ディスコーシズ(Journal of Discourses)』第11巻41頁にて、「マリアの夫であるジョセフには妻が一人しかいなかったようだが、妻マリアにはもう一人の夫がいた」と語り、それが父なる神自身であるとしました。さらに同説教集第8巻27頁では、イエスの誕生は私たちが父から生まれたのと全く同じ「自然な行為(性交渉)の結果」であるとも述べています。前出のオルソン・プラットも『ザ・シーアー』158頁で「神とマリアは当時、合法的な夫婦関係にあった」と補足しており、神聖な処女降誕の舞台裏は、天の父が自分の「霊の娘(マリア)」と地上の肉体を通じて交わる(はい!近親相姦です)という、あまりに生々しくもおぞましいことが公式に記録されています。
この「神の性」への執着は、人類の始祖アダムの正体にも飛び火します。ブリガム・ヤングが提唱した「アダム-ゴッド理論」によれば、父なる神自身が「アダム」として、天の妻の一人である「イブ」を連れてエデンの園に降り立ち、そこで再び性交を行って人類の肉体を増やした(はい!近親相姦です)とされます(『ジャーナル・オブ・ディスコーシズ』第1巻50頁)。これでお腹いっぱいになったアナタ。まだまだですよ。
なんと、地上に降りた息子イエス-キリスト自身も、父の血を引いてしっかり「一夫多妻」を実践していたというのです。十二使徒のオルソン-ハイドは、1854年の総大会の説教(『ジャーナル・オブ・ディスコーシズ』第2巻81-82頁)において、「イエスはカナの婚礼における花婿その人であり、マリアやマルタ、マグダラのマリアを妻として娶(めと)っていた」(マリアとマルタは姉妹ですよ!)と言い放ちました。彼によれば、十字架にかかる前に「自分の子孫(種)を見る」ために、イエスは地上で複数回、結婚の性関係を持つ必要があったというのです。
さて、ここでモルモン教が誇る壮大な「救いの計画」を見返してみると、決定的な矛盾に突き当たります。現在の教会は地上において「一夫一婦制」や「純潔の律法(結婚外の性交渉の禁止)」を厳格に求め、違反者には厳しい処分を下します。しかし、人間が目指すべきゴールである最高天国(日の栄えの王国)で待っているのは、神となって複数の妻と永遠に生殖行為を繰り返すという、地上では厳禁の「多妻結婚」の世界なのです。
なぜ、こんなとんでもない教えが預言者や使徒の口から語られたのか。研究者の意見は一致しています。自分たちが実践していた多妻結婚を正当化するためだった、と。