ご案内します!モルモン神殿
第四回 神殿の最奥エリートのためだけ特権儀式『第二の油そそぎ』
① 神殿の奥の奥「至聖所」
ご案内します!モルモン神殿。今回はシリーズ第四回目、最終回となります。
世界に数あるモルモン神殿でも、今から話す「至聖所」があるところはおおくなはいと言われます。「至聖所」とはソロモン神殿においては膜の向こう側、大祭司のみが年に一度だけ入ることができる場所で、そこには契約の箱とモーセの十戒の板が安置されていたといいます。モルモン神殿の「至聖所(Holy of Holies)」も、そこに入れる信者は極めて限られています。そこではモルモン教にとっては功労者に対して最高レベルの秘密の儀式が行われています。
残念ながら「至聖所」の写真はほとんどありません。大昔に教会が公開したソルトレーク神殿のそれが公開されています。
② 第二の油そそぎ(Second Anointing)
この「至聖所」で行われている儀式は『第二の油そそぎ(Second Anointing)』と言われます。エンダウメントの前にイニシエーションで油を注がれますが、それが第一でこちらは第二ということになります。
この儀式を受けると、以下の約束が与えられます。
この「第二の油そそぎ」を受けた人物には、「どれほど大きな罪を犯しようとも、将来の昇栄(日の栄えの王国の最高位へ進み、神になる)を100%保証する」というこの上ない約束が与えられます。ルターが猛烈に避難した免罪符、それよりも強烈な保証ですね。
儀式後に罪を犯しても、病気になったり、現世で苦しんだり、人の法で裁かれたりという「現世でのペナルティ」は課されます。しかし、来世での最上位の救い(昇栄)は確定しています。どんな罪を犯して現世で罰を受けようとも、復活の時には昇栄、つまり神になります。
ただし、どんな罪でも許されるわけではなく、(ここからがミソ!)教義上たった2つだけ、この強力な免罪符が取り上げられる「絶対に犯してはならない罪」が設定されています。
- 「聖霊を汚す罪(モルモンの真理の否定)」:要するにモルモン教を背教すること。
- 「無辜の血を流すこと」: 罪のない人を殺害することや理由なく他人の命を奪うこと。(罪のある人とか理由があれば殺人もOKということです)
③ 特権を許された受領者の「資格」
じゃあ。私も!と思ったあなた。とても残念なことですが、この儀式は通常の神殿の儀式(エンダウメントや夫婦の結び固め)とは異なり、個人の意思で申請したり、特定の年齢に達すれば自動的に受けられたりするものではありません。完全に「招待制」であり、極めて限定された人(すなわちエリートモルモン)だけが対象となります。
- 中央幹部・地域幹部からの推薦: 通常は、十二使徒定員会や大管長会などの教会最高幹部からの直接の推薦、または承認が必要です。地元のワードのビッショップしかあなたを知らないでは望み薄です。
- 教会の最高指導者層とその配偶者: 使徒、七十人定員会の一部、総管理監督者などの「中央幹部(General Authorities)」に召された男性と、その妻が主に対象となります。ビッショプの顧問とかステークの役員のレベルでは・・・。
- 長年の忠実な奉仕と多大な貢献: 単に信仰深いだけでなく、教会の発展に対して一生を捧げ、多大な時間的・財政的・精神的奉仕を全うした(あるいは全うしつつある)と認められた末日聖徒の模範的な夫婦。これは実際のところ活発モルモンなら皆そうじゃないかと、私は思うのですが?そうです、結局はヒエラルキーの上にどれだけのぼっているかなのです。
④ 今までに受けたことがはっきりしている人たち
第二の油注ぎは極秘裏に行われるため、受けた人の名が公表されることはありません。しかし、教会の歴史的記録(日記や公文書)、あるいは近年教会を離脱した元幹部による告発・証言から、具体的に誰が受けたのかが判明しています。
【19世紀〜20世紀初頭】
初期の教会では、一定の資格を満たした多くの指導者も受けていました。本人の日記などに明確な記述が残っています。
- ジョセフ・スミス・ジュニア と エマ・スミス
- ブリガム・ヤング(第2代大管長)
- ウィルフォード・ウッドラフ(第4代大管長)
- ハイラム・スミス
- ジョン・D・リー(John D. Lee):(注:ヤングの腹心でマウンテンメドウの虐殺で知られる人物。彼の自伝の中で、自身が第二の油注ぎを受けた時の様子や、それによって「どのような罪を犯しても(無辜の血を流すこと以外は)救われる」と教えられた生々しい記憶が綴られている)
【現代(元幹部で暴露者)】
現代(20世紀後半〜21世紀)において、これを受けたと言っているのは皮肉なことに、儀式に反発し暴露した元モルモンの幹部です。
トム・フィリップス(Tom Phillips)
イギリスの元ステーク会長であり、エリア・セブンティ(地域七十人)のすぐ下の地位にいました。2000年代初頭に、当時の十二使徒ラッセル・M・ネルソンの推薦と承認を得て、プレストン神殿で妻と共に第二の油注ぎを受けました。のちに教会を離れ、儀式の全容(足を洗う儀式、妻が夫に油を注ぐ儀式など)を詳細に暴露しました。
ハンス・マットソン(Hans Mattsson)
スウェーデン出身の元地域七十人(ヨーロッパ地域の幹部)。幹部時代に第二の油注ぎを受けたとされています。のちに教会の歴史的問題に直面して疑問を抱き、ニューヨーク・タイムズなどで教会の隠蔽体質を告発しました。後に紹介するYouTubeのインタビューは大変センセーショナルです。
儀式の詳細:密室で行われるオカルティックな進行
このように超エリート限定の「素晴らしい儀式」なのです。もっとも全く信仰のない人間からすれば、「そんなもんより平信者にUSJの年間パス配ってやれよ!」という話しですよね。ともあれ、儀式の進行もモルモン神殿らしくなかなかオカルティックです。
この儀式の由来はヨハネの福音書12章の「ベタニアのマリアのイエスへの油注ぎ」と同書13章の「イエスの弟子たちへの洗足」です。この二箇所からジョセフ・スミスはこのとんでもない儀式をひらめいたのです。
先に述べたとおりこの儀式は、神殿の「至聖所」あるいはそれに準ずる部屋で行われます。(至聖所がない神殿も多い)トム・フィリップスの証言では、彼の場合はイギリスのプレストン神殿の結び固めの部屋を貸し切って行われています。
★ 前半:幹部による執行
① 神殿執行者(使徒など)による儀式:
同席しているのは、「神殿執行者(主に十二使徒のメンバー)」と「受領者である夫婦」の合計3人(または立ち会いの幹部数人)です。
② 足洗い(洗足): まず執行者が夫の足を洗います。
③ 夫への油注ぎと叙任: 執行者が夫の頭に油を注ぎ、神に対する「王および祭司(King and Priest)」として叙任し、永遠の命を保証します。
④ 妻への油注ぎと叙任: 続いて、同じ部屋で執行者が今度は妻の頭に油を注ぎ、神に対する「女王および祭司(Queen and Priestess)」として叙任します。
ここで強調しておきたいのは、執行者が洗足(足を洗う)するのは夫だけだと言うことです。妻へは油注ぎだけです。
★ 後半(夫婦水入らずの儀式)
ここで執行者が退席し、部屋には夫婦二人きりになります。儀式の方法は口頭で伝えられ紙に書いたものが渡されます。
① 妻による夫の足洗いと油注ぎ:
妻が夫の足を洗い、手や布で拭います。(マリアは髪の毛で拭いましたが、ショートヘアの女子も多い現代それはされていません)
② 妻が夫の頭(および足)に聖なる油を注ぎます。
③ 妻から夫への祝福と叙任:
ここで初めて、妻が夫の頭に手を置き、夫を「自身の主であり王(Lord and King)」「神のようになる者」として祝福し、自分の言葉で祈りを捧げます。この瞬間、妻は「神に対する」だけでなく、「夫に対する女王(王を誕生させる存在)」としての役割を完了させます。
後半は一方的な妻から夫への執行となっています。夫が妻への洗足や油注ぎがないことを現代人なら奇異に感じられることでしょう。そうです、この神聖な儀式で女性は男性への絶対的従属をすり込まれるのです。
ここで夫の方が「かあさん。今までありがとうな。今度はわしから。さあ、足を伸ばして」なんてことはあり得ませんし、許されません。念のため。
以上が「第二の油注ぎ」の全てです。
ひねくれ者の私はここまで調べて、例えば20人以上女性との多妻結婚していたブリガム・ヤングなどどうしていたのかなと思ってしまいました。調べると……。
ヤングはソルトレークのライオンハウスを大奥として二十数人の妻を集めて暮らしていました。夜ごと妻たちの部屋を回ってこの儀式を受けていた、(妻に執行させていた)というのです。
そこから考えを進めると、儀式の根拠となったイエスとベタニアのマリア(マルタの妹)との関係にも考えが及びます。モルモン教がイエスは地上では複数の女性と結婚していた(マルタもマリアもイエスの結婚相手)と教えているのはモルモン批判者であれば周知のことです。即ちこの第二の油注ぎはイエスやマリアの愛といたわりの自然な行為を歪めて多妻結婚はイエスも当時者であると教える大変な瀆神行為なのです。まさに「地獄に落ちるわよ」なのです。
私らのような脱会者には「そんなアホなこと、勝手にやってなはれ」で済みますが問題は現役モルモン信者です。
日々の生活を切り詰め、什分の一の献金を納め、時に仕事を犠牲にして教会に出席し奉仕し、必死に戒めを守り……。それでも「最後まで堪え忍ばなければ、救われるかどうかは死ぬまで分からない」と教え込まれている一般信者。
「わたしたちは、自分の行えることをすべて行った後に、神の恵みによって救われることを知っているからである。」(ニファイ第二書 25:23)
しかし、その一方で、組織のトップにのし上がった一握りの超エリート幹部たちだけが、現世にある時点で早々に「無条件のゴールドパス」を受け取り、自分たちの救いを確定させて「必死のパッチ」の一般信者を高みの見物をしているのです。
⑤ 命がけの告発者ハンス・マットソン
とうてい人権意識ある人であれば許せることではありません。儀式を受けたモルモン幹部にも良心を持つ人がいました。それが先に挙げたトム・フィリップス(Tom Phillips)氏とハンス・マットソン氏でした。ここではマットソン氏を紹介します。
この最重要機密を実名・顔出しで世界に暴露した命がけの告発者がハンス・マットソン氏、彼は元中央幹部(地域七十人)でした。一般会員に嘘をつき、隠蔽している実態に良心が耐えかね、告発に踏み切りました。彼の勇気のお蔭で私のような東洋の端っこにいるものにも真実が伝えられました。感謝しかありません。
彼の生々しいインタビューの様子は、以下のURL(YouTube)から全編を観ることができます。翻訳機能・字幕機能など駆使して、ぜひ皆さんの目で、その真実を確かめてみてください。
【告発インタビュー動画】
この当初は生配信でした。途中からコメントが沸騰。大炎上となります。その様子に観ているこちらも熱くなってしまいます。当日寄せられたコメントの一部を紹介します。
「もうこれ以上、教会を信じることはできない。今すぐ辞める手続きをする」
「私たちは毎月必死で什分の一を払い、戒めに怯えてきたのに、幹部たちは裏でこんな優遇を受けていたとは。あまりにも不公平で涙が出る」
「マットソンさん、真実を話してくれてありがとう。あなたの勇気で、私の長年の洗脳が解けました」
⑥ さようなら神殿
さて、ざっとでしたがこれで神殿ツアーは終了です。他にも裏話はたくさんあるのですが……。昔は夜行バスをチャーターして東京神殿まで行き弾丸エンダウメントを実施していたこととか。それはまたの機会にしましょう。
大阪神殿ができて一般開放(オープンハウス)にいく機会があるなら、私の案内を思い出してあれこれ想像しつつ見て回ってくれるとうれしいです。